改正区分所有法解説①区分所有者の責任の明確化

 

2026年4月1日に施行が予定されている「改正区分所有法」は、老朽化が進む管理不全マンション問題を解消し、マンションの長寿命化や再生を推進することを目的としています。この改正の重要な柱の一つが、「区分所有者の責任の明確化」です。

現行の区分所有法では、区分所有者は、団体との関係では、権利の主体であって、義務の主体ではありませんでした。これが組合員のマンション管理に対する無関心の一因となり、非協力的な組合員の存在に悩む管理組合の大きな問題となっていました。

今回のブログでは、改正区分所有法でどのように区分所有者の義務が具体化されたのか、そのポイントを解説します。

 

1.新設された「区分所有者の責務」(第五条の二)

改正法では、区分所有者の基本的な「責務」について新たな条文が設けられました。

・第五条の二: 「区分所有者は、第三条に規定する団体の構成員として、建物並びにその敷地及び附属施設…の管理が適正かつ円滑に行われるよう、相互に協力しなければならない」と明確に定められています。

これは、マンションが個人の専有部分の集まりだけでなく、全体として一体の共同体であり、その維持管理には全区分所有者の相互協力が不可欠であるという基本的な考え方を改めて強調したものです。マンション管理の根幹をなす「協力義務」が、法律上明確に位置づけられたことになります。

2.変更された「区分所有者の権利義務等」(第六条2)

共用部分だけでなく、他者の専有部分との関係においても、区分所有者の権利と義務がより具体的に示されました。

• 第六条2: 「区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分若しくは自己の所有に属しない共用部分を使用し、又は自らこれらを保存することを請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない」と変更されました。

この変更は、例えば、自身の住戸の配管工事のために、他の住戸の壁や天井を一時的に使用する必要がある場合など、マンション全体の維持管理や改良を円滑に進めるための権利を認めつつ、それによって他者に生じた損害については、原因者が償金を支払う義務があることを明確にしています

。これは、**標準管理規約の23条(必要箇所への立入り)**とも関連しており、区分所有者間のトラブルを未然に防ぎながら、計画的なメンテナンスを可能にするための重要な規定と言えるでしょう。

3.新設された「国内管理人」制度(第六条の二)

近年増加している「海外オーナー」や「オーナー不在」といった問題への対応として、「国内管理人」制度が新設されました。

• 第六条の二: 「区分所有者は、国内に住所又は居所…を有せず、又は有しないこととなる場合には、その専有部分及び共用部分の管理に関する事務を行わせるため、国内に住所又は居所を有する者のうちから管理人を選任することができる」と規定されています。

この制度は、「海外オーナー、オーナー不在、管理不全オーナーの管理人」という課題に対処するためのものであり、所有者が国内にいない場合でも、**マンションの管理に関する連絡や手続きが円滑に行われるよう、国内に窓口を設けるという新たな義務(または責任を果たすための選択肢)**が提供された形です。これにより、連絡が取れない所有者がいることによるマンション管理の停滞を防ぎ、管理不全のリスクを低減することが期待されます。

まとめ

これらの改正は、区分所有者がマンションという共同資産の管理者として負うべき責任を、より明確に、そして具体的に定めたものです

。特に、「相互協力の責務」「国内管理人」の選任可能性は、マンションの健全な維持管理にとって不可欠な要素であり、改正法の目的である「管理不全マンション」対策の中核をなすものと言えるでしょう。

改正区分所有法が施行される2026年4月1日以降は、これらの規定がマンション管理の実務に大きな影響を与えることになります。

今回の区分所有法の改正はまさに大改正というべきもので、国が本気でマンション管理の適正化に取り組んでいることを示すものです。マンション所有者の皆様は、自身の義務と責任のもと、所有者全員の参画で、より良いマンションライフの実現に貢献していくことが求められます。

コメント

このブログの人気の投稿

改訂版・外部管理者方式ガイドラインの考察

役員就任サービス始めます

まずは相談する勇気を持ってください